「聖女と聖剣の伝説でしたら、わたくしも知ってはいますけれど」
「え!?」

 イザベラのまさかの発言に驚く。
 それは皆も同じで。

「どういうことだよ! 知ってるって、なんでお前がそんなこと」

 ラウルがそう言いながら詰め寄るとイザベラは瞳を大きくして慌てたように彼から目を逸らした。
 その頬が少し赤らんで見えるのは気のせいではないだろう。

「い、いえ、その……実はわたくし、幼いころお姫様が出てくるようなロマンチックな物語が大好きでして、その中で一番のお気に入りが聖女の物語でしたの」

 意外だったけれど、ひょっとしてイザベラのその派手な髪型はお姫様への憧れから来ているのだろうか。
 そのロマンチックな物語を思い出したのか、イザベラは両手を胸に当ててうっとりと続けた。

「聖女が登場する物語はいつも悲恋で終わりますけれど、それがなんとも切なくて胸がきゅんとなるんですの」
「それで、聖剣がどこにあるのかお前知ってるのか!?」
「い、いえ、流石にそこまでは……聖剣が実在しているなんて今初めて知りましたもの」
「なんだよ……」

 あからさまに落胆するラウル。
 私も肩を落とす。