「それにしても、あんたも協力してくれるとは思わなかったぜ、王子様」

 ラウルが体を起こして向かいのソファに座るリュシアン様に言った。
 そう、意外にもリュシアン様とマルセルさんも一緒に部屋の捜索に参加してくれていた。
 リュシアン様はラウルを一瞥すると、再び分厚い書物に目を落とした。

「勘違いしないで欲しいな。あの騎士のことは大嫌いだし全く信用していないけど、レティシアに危険が迫っているというなら話は別だ。それに……」
「それに?」
「……いや、こんな文献が存在していることに驚いてね」

 それは私も同じだった。
 歴史の教科書にも登場しない『聖女』に関する資料がこんなにも存在していることに驚いていた。
 この学園の図書室にも、王立図書館にだってこんな資料置いてないだろう。
 どれも、あくまで『聖女』と呼ばれた女性が大昔にいたらしいという漠然とした内容で、『セラスティア』の名がはっきりと書かれたものなどは無かったけれど。それでもセラスティアが生きた時代……おそらくは千年近く前の文献はどれもとても興味深く、懐かしさすら覚えた。
 だから同じときを過ごした記憶のあるリュシアン様もきっと同じ気持ちなのではないだろうか。