(思い出すどころか、はしたない子だと思われた……?)

 期待していた分ショックで、丁度痣のあるあたりがちくちくと痛くて、昨夜の夢のように私は項垂れた。

「何かにかぶれたのでは? きっとすぐに消えますよ」
「……」
「ミス・クローチェ?」
「……先生は、私のこと変な子だって思ってますよね」

 ついそんな言葉が口をついて出てしまった。
 でもすぐに後悔する。
 これで肯定されてしまったら――。

 ふぅ、と先生は短く息を吐いた。

「物好きもいたものだとは思っていますが」
「え?」

 ゆっくりと顔を上げる。

「自分で言うのもなんですが、こんな歳の離れた堅物よりも、もっと貴女に相応しい相手がいるでしょうに」
「いません!」
 
 きっぱりと否定すると先生は少し驚いたようだった。

「先生以外の男の人になんて全く興味ありません!」
「……確か、貴方には許婚がいたはずでは? ファヴィーノ家の」
「あれは! あくまで親が勝手に決めたことで、ラウルはただの幼馴染で友だちです!」