「でも本当にもう平気なの? 痛くない?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
笑顔で答えるとアンナはほっとした顔をした。そして。
「そういえば先生、あんなに傷のこと気にしてるのに聖女の力のことは訊かなかったわね」
「え?」
急に真面目な口調でアンナは続けた。
「ラウルはすぐにそう訊いたでしょ? 力のことを知っていたら誰だって治せないのかって訊くわよ。私も思ったもの。でも、先生は訊かなかった」
「? だって先生もう力は使うなって」
「そうじゃなくて! 先生はきっと知っていたのよ。聖女自身の傷は治せないってこと」
「!」
アンナの言わんとしていることにやっと気付く。
「じゃあ、先生やっぱり……」
「えぇ。やっぱりユリウス先生、前世の記憶がちゃんとあるんだわ」
ごくりと思わず喉が鳴ってしまった。
「アンナ凄い。まるで探偵みたい」
「ふふん。名探偵アンナって呼んで?」
アンナは得意げに胸を張って、更に人差し指を立てた。
「じゃあ、もうひとつ」
「なに?」



