ドキリとする。
 先生が手紙を置き再びこちらにやってきて、私は慌てて立ち上がった。

「だ、大丈夫です! アンナもいますし!」
「……」

 疑わし気な目で見つめられて、もう一度私は必死な思いで言う。

「本当に、痛みももうほとんど無くなりましたし、ゆっくり歩いて行きますので!」

 ほんのちょっとの間だけでも心臓に悪いのに、これ以上先生に触れられたら本気で身体がどうにかなってしまいそうだ。足の痛みどころではない。
 と、先生が短く息を吐いて私から離れた。

「……わかりました。ミス・スペンサー、よろしくお願いします」
「はい!」

 そうして私たちは一礼し先生の部屋を出たのだった。



 先生の部屋から少し離れてからハァと息を吐くとアンナがニヤニヤとした顔でこちらを覗きこんできた。

「また抱っこしてもらえば良かったのに~」
「いやいやもうホント無理だから!」

 そう小声で叫ぶと、アンナは噴き出すように笑った。

「でしょうね。ふふ、さっきのレティの顔思い出しちゃったわ」
「そ、そんなに酷い顔してた?」
「完全に恋する乙女の顔だったもの」
「やめて~~」

 また火照りはじめた顔を両手で覆う。