「イザベラは昨日の朝ラウルとレティが一緒にいたっていう話を聞いてレティを呼び出したんでしょう? だとしたら、イザベラの他にもその事を知っている人はいるってことだもの」
「そっか……うん、確かに」

 私も頷く。
 ラウルのことを好きな子がこの学園に何人いるのか見当もつかないけれど、昨日の朝の話が出回っているのは確かなのだろう。

「も~~なんかラウルにも腹が立ってきたわ!」
「でも、昨日のことはラウルは何も悪くないし」
「そうだけど、そもそもラウルが軽い気持ちであっちこっちに手を出しているからいけないのよ!」

 私は苦笑する。こればかりは擁護できない。
 いつか痛い目を見るのではと心配していたけれど、まさかその火の粉が私に降りかかってくるとは思わなかった。

「みんな焦っているのよ、今年卒業だから。その前にラウルを射止めようってね」
「そっか……みんな頑張ってるんだ」

 そう、私たち3年生は今年この学園を卒業する。
 私だって、ユリウス先生とこの学園で過ごせるのはあと少しなのだ。

(みんな、自分の恋に必死なんだ……)

「それでも! こういうやり方は反則でしょ!」
「う、うん。だよね」
「こういう陰湿な子って直接には何にも出来ないんだと思うけど、一応は用心してねレティ」
「うん」