「オレには葵しかいないってことがわかったんだよ。なぁ葵もそうだろ。オレら、やり直そう?」
いつもぶっきらぼうだった瀬良くんとは思えない声音だ。
思わず何かを期待しそうになる。
しかしそれは一瞬のこと。
季節一つ分戻ったら大喜びしていただろう自分の心は、ひどく凪いでいた。
自分が帰りたい場所はここじゃないってことがわかった。

―もう帰れないのだとしても。

勇気を振りしぼって頭を下げる。
「ごめんなさい。もう瀬良くんとは付き合えません」
「は?何でだよ」

眉根を寄せて、なじみのある不機嫌な瀬良くんに戻った。
苛立っている瀬良くんは苦手だ。
自分の意見が受け入れられるまで決して譲らない。
言い訳も、私の意見も、状況も、彼の前では無意味だ。