春の装いが着慣れてきた頃、突如としてその連絡はきた。
土曜日の夜、ハレルヤで過ごす充実感にあふれた時間の後、自宅でくつろいでいる時だった。
覚えのある番号からのショートメッセージが通知画面に表示される。
瀬良くんだ。
メールなのは、LINEはブロックしていたからだろう。
“オレらやり直さない?”
そんな一言だけを告げるメール画面を見て、私はひゅっと息をのんだ。

少しずつ距離が近付いて、思い切って告白して受け入れられた時。
勝手のわからない瀬良くんの趣味に合わせて頑張ったこと。
無表情なことが多い彼の癖を見つけた時の喜び。
ただ、幸せだった時の記憶だけがぶわっと体中を駆け巡った。

(もう一度、戻れるの?)

ぎゅっと目を閉じた。
幸せの味を知っている私の一部が喜んでいるのがわかった。

(本当に、戻りたいの?)

ベッドの木枠が手に触れた。
瀬良くんと決別するために、自分で選んで購入した自分好みの家具だ。
家具や小物を買い直したことで色にこだわりがあることに気づき、新しい勉強に取り組んでいる自分がいる。
枕元に置いてある、シャチのぬいぐるみが目に入った。
(相談しよう、風太に)
急いた心のまま、朝が来るのを待った。