「ううん、何でもないの」
「そう?ならいいんだけど」
スッキリしない顔で口をへの字に曲げた風太を見て、ふと思ったことを尋ねてみた。
「風太は、私とばっか遊んでていいの?友達とか、サークルとか、色々あるんじゃないの?」
4年制大学のことは何となくしかわからなかったが、瀬良くんのスケジュールを思い出しながら言った。
土曜日はハレルヤへ手伝いに行っている風太には休みは日曜日しかないと思うと、それは貴重な時間ではないかと今更ながらに思ったのだ。

「え?」
私の思いとは裏腹に、キョトンとした顔の風太がそこには居た。
そしてヘラっと笑うと、手元にあったジュースを一口飲んで言った。
「葵さんと居るの、楽しいんだ」
そう言われて、私も風太といるのは楽しいと思って過ごしていたので、同じように答えた。
「私も、風太と居るのは楽しいよ」
すると、風太は今度は少し眉根を寄せて、困ったような顔になった。
そして、私には聞き取れない小声で何事かをつぶやいたかと思うと、いつもの明るさで「ありがとう」と笑った。