「ティアナ様、彼女を同情されているようですが、今大変な状況にご自分があることをお忘れでは?」
「忘れてたわ」
すっかりその話題に興味津々となってしまった。
だが今、我が家が狙われているというわけで。
ディオンからは一切連絡は無い。
わざと知らせないのか、それとも直前まで本人が知らされていないだけか。
いや、あの賢いディオンがそんな情報を掴んでいないわけが無い。
なら私を心配させないようにと思うのが一番だろう。
「お父様」
私は背筋を但し顔を引き締める。
「ディオンは知った上でこちらに何も言わないのです。
カール様も今はお仕事がお忙しいなら邪魔をしたくはありません。
しばらく様子を見ましょう」
お父様は私の意見をため息交じりに聞き入れてくれた。
部屋に戻り、窓辺から外をぼんやり眺める。
自分は彼らを待たせている身。
彼らの気持ちや事情が変わるならば何か言う資格など無い。
「ティアナ様」
いつの間にか部屋に入っていたハーディスがテーブルにお茶を用意していた。
私は黙って椅子に座り、ハーディスはティーカップに琥珀色の紅茶を注ぐ。
立ち上った少し甘い香りは知らずに沈んでいた気持ちをホッとさせた。
「気になりますか?」
「そりゃ、ね」
苦笑いして紅茶を飲む。
気になると言いながら、私は落ち込んでいるレベルが低いことに気付いていた。
おそらくそれは、私に紅茶を飲ませるこの胡散臭い執事のせい。
あの城での出来事でハーディスはあの神の器であったとしてもこの世界で生きている。
色々自分に違和感を覚えていたというハーディスは、事実を知っても特に変わらなかった。
それが嬉しいのかと聞かれれば、嬉しいと答えるしか無い。
ハーディスが側に居ること、これが私にとって安心できることなのだ。
内心危ないヤツだとわかっていても。



