等間隔の場所で配置された衛兵がこちらの存在も無視したように立っているのを気にしないように城内を進む。
そして出た中庭は日がよく当たるものの、思ったよりも狭い場所に思えた。
周囲を低い建物で囲まれていて、その真ん中には主のようにそびえる大きな木が枝を空へと伸ばしている。
芝生に所々花壇があって、私はぼんやりその景色を見ていたら、
「こんなに狭かったっけ」
と呟いていた。
「私達が大きくなったんですよ。
貴女は小さい身体であの木に登りたくて仕方が無いようでしたが」
「そう、だったの」
思わず呟いたのに、記憶を思い出したのですねとハーディスは聞かない。
じんわりと記憶の扉が開いていく気がする。
ここはとても居心地が良かった。
顔は思い出せないが、よく難しい本を読んでいた誰かがいた気がする。
おそらくそれがハーディスなのだろう。
「良いのですよ、無理に思い出そうとしなくても」
私の先を読むようにハーディスの声は優しい。
「ううん。無理にしてるわけじゃない。
ただ知っておきたかったの。
貴方は思い出して欲しくないのだとは思うけど」
先ほどから隣に居るハーディスの顔をあえて見ていない。
ハーディスも少しだけ距離を取っているのがわかる。
私の記憶を消したことを悔いているのだろうか。
「戻りたくは無いの?」
初めてハーディスの方を向くと、意味がわかっているのかいつもの表情で私に笑顔を見せる。
「私がティアナ様の側に居たいのです。
我が侭を私が言っているのですよ。
それに私が居なければ、無茶をされますからね」
「長い付き合いだものね」
「・・・・・・えぇ。本当に」
ハーディスは遠くを見ていた。
見える大きな木では無い。
きっともっと先を。
「すぐにあの村へ行くの?」
「お嬢様の許可があればこの後すぐにでも。
気になさっているでしょう?あの村のことが」
私のためだから。
それに結局ずっと私は甘えてきたのだろう。
ハーディスが私の横から前に進み、大きな木の幹に手を当てた。
こちらからは顔は見えない。
急にそのハーディスが全く違う男の背中に見えた。
細身では無く、大きな背中。
偉丈夫のカール様のように、体格も大きい。
黒の長い髪が風に揺れ、私は目の前に起きている事に釘付けになる。



