侯爵は私の表情を見て理解したのか、
「記憶を消す魔法を使うのはそちらにいらっしゃる王子です。
そう、あの時と同じように」
「ブロンザイト伯爵、過去の話は思い出の場所でゆっくりお話ししようと思っているのです。
どうかここでは内密にしていただけますか?」
「それは失礼致しました」
ハーディスが口を挟み、この部屋の緊張したような雰囲気が一変して溶けたようだ。
「ティアナ・アイオライト」
「はい」
低く重い国王に呼びかけられ、私は背筋を伸ばし返事をする。
「お前の魔法は昔私も見ている。
その力故に外に漏らしてはならず、軽々に使ってはならぬ」
「この度のこと、誠に申し訳ございません」
国王に昔見られていたのは知らなかったが、私の本来の魔法を使ってはいけないとは常々言われていた。
それを使ってしまったことで、私の知らない場所で騒ぎになって迷惑をかけているのは理解した。
だが自分の記憶がおかしな事に気付いた。
『私の本来の魔法を使ってはいけない。
それを知っているのは知識だと思っていた。
だけど知識で自分の魔法を知ってるなんて言うのはおかしい。
実際に使ったからこそ危険視されたんだ。
なのに何故、私にはその記憶が無いの?!』
今更だ。
家族からも使っては駄目だと言われるだけで何があったかなんて聞いたことは無い。
使ったからこそ禁止されているのに、そんな単純なことを気付いていなかっただなんて。
「ティアナ様」
呼びかけられ、知らずに俯いていた顔を弾かれたように上げる。
横に座るハーディスが心配そうに私を見ていた。
慌てて前を向けば国王は険しい顔のまま私を見ていて顔が強ばる。
私の膝の上に置かれた手に、大きな手が被さった。
それはハーディスの手。
温かな体温が伝わってきて、私は知らずに力の入っていた肩の力が抜けた。



