「ティアナ様、そろそろ中に」
ハーディスが未だ笑いを堪えたような引きつった顔で手を差し出す。
何がそんなにおかしいのか。
貴女のその顔の方がおかしいわよ。
「ティアナ嬢」
カール様の呼びかけに顔を動かす。
既に薄暗くなったそこには、優しげな顔では無く一軍人のように思える表情でカール様が立っている。
「今日村であったことについては今後の改善のために報告をします。
問題は貴女の魔法についてです。
あれは公にされてないことですね?」
やはりそこは疑問を抱くわよね。
一部は知っていると言っても今回誰も死者も大きなけが人も出なかったというのはかなり事実を曲げなくてはならない。
あれだけの村人を黙らせるのも無理だ。
どうしよう、全て隠せばあの村の改善に国は動いてくれない。
「その点については少しお待ちいただけませんか?」
悩んでいる私を差し置いて口を挟んできたのはハーディスだった。
「ティアナ様の魔法についてはこの国でも機密事項に当たります。
処理をするには国王の許可も必要ですので、事が済み次第私からカール様にご連絡いたします」
「処理?
それに今の言葉では君自身が国王に謁見できるかのような言い方だ」
鋭い目と声色でハーディスに言うカール様に、ハーディスは笑顔のまま。
「詳しいお話は後日。
一番はお嬢様の身の安全のためにすることです。
それだけは信じていただければ」
じっとカール様はハーディスを見ていた。
一切二人は目をそらさず、私は側でハラハラと二人を交互に見ていることしか出来ない。
やがてカール様が大きなため息をついた。
「君がティアナ嬢に不利なことはしないということだけは信じている。
それ以外は信じていない」
「十分でございます」
「なら早々に連絡を頼む。
村人達の命がかかっているんだ」
「もちろんでございます」
厳しい声で続けるカール様に、ハーディスは笑みを消し胸に手を当て真っ直ぐに答えた。
カール様は、わかった、と言うと私の方を向く。
「次の相手はハーディスと聞いています。
ですが今回のことがありますのでお会いする時間を頂くかもしれませんがよろしいですか?
もちろん村の様子はお伝えしますが」
「はい。私も気になりますのでお願いいたします」
カール様は私に微笑んだ後、馬に乗って帰られた。
それは風のように凄いスピードで、私を乗せてるときどれだけ慎重に走ってたかがわかった。



