「行く度に上手くなっているよな」

無事にツーリングから帰ってきて、家まで送ってもらった。

「ありがとー!」

ボクが喜ぶと塩野さんも笑った。

「もし、機会があったら…」

ボクを見つめる塩野さんは切ない様子で

「バイクでオレの田舎においで。
あちこちいい場所があるんだ」

「うん」

この約束は、果たされるかどうかはわからないけれど。

もし果たす事が出来たら…

その時にでも、気持ちを伝えよう。



そう考えたらボクの中のモヤモヤが消えて、すっきりした。

うん、もう、大丈夫。



「じゃあ、次は31日だね」

ボクの言葉に塩野さんは頷いた。

「その日の夕方に荷物を持って行こうと思うんだけど…」

「うん、いいよ。
ただ、オレは職場からそのままバイクで実家に帰るから、もういないけど」

『もういない』…かぁ

「そっかぁ」

力無くボクは笑う。

「鍵は31日、職場で渡すから」



塩野さんはそう言って帰っていった。