「…ない」



12月に入ってすぐ、短期アルバイトの名簿が回ってきて。

にーさんは焦っていた。

「どーしたの?」

にーさんがじっと名簿を見ながら、

「名前がない…」

ボクも、えっ?と声をあげたきり、言葉が出ない。

「他の班に混ざってるとか?」

塩野さんも心配そうに話に加わる。

「今日、確か訓練だったよな?」

にーさんはそう言うと慌てて班から出て行った。

「…恋は盲目」

その後ろ姿を見ながら呟いた塩野さんが印象的だった。