どれにしよう。
全部美味しそうで、決められない。
うーんと唸るわたしは、そこでハッとあることに気が付いた。
「ん……?」
じっと耳を澄ましてみる。
すると思った通り、こそこそとささやくような声が耳に届いてきた。
そろりと周りを見てみると、女子高生の集団が揃ってこちらに視線を向けている。
その視線はとっても熱い。
「俳優の人?」
「えー、見たことないけど超イケメン!」
「サイン頼んでみる?」
あー。
なるほど。
九重は街に出てもモテるんだね。
そうですかそうですか。
当の本人はまったく聞こえていないようで、目が合うとにこっと甘く微笑んだ。
「お決まりになりましたか、お嬢様」
「え、えっと……」
決められないので、えいっと目に入ったものを指差してみる。
「チーズインハンバーグですね。かしこまりました」
どうやらわたしが選んだものは、お店のNo. 1の品らしい。
「九重はどれにするの?」
「私は外食禁止ですので」
「えー、そんな。一緒に食べようよ」
わたしだけが食べて九重は食べられないなんて、そんなの不公平だ。