「ここが、ふぁみれす……」
ぐるりと店内を見回すと。
家族で来ている人や、仕事をしているサラリーマンの人、勉強をしている学生さん、そして。
お嬢様学校の談笑とは違って、大きく口を開けて楽しげに話す女子高生の姿があった。
「何名様ですか?」
奥の方から制服を着た店員の人が出てきて、にこやかな笑みを浮かべた。
「に、二名様、ですっ」
咄嗟に言うと、店員さんはくすりと笑って、「ご案内しますね」と言ってくれた。
「お嬢様、ああいうときは、『二名です』と言うのですよ」
歩いている途中でこそっと九重が耳打ち。
そ、そうだったの!?
思い切り二名『様』ってつけちゃったよ。
恥ずかしい……。
「今度来たときは上手くやるから」
「はい。楽しみにしています」
意気込んだところで席に到着。
向かい合って座ると、店員さんは「ご注文がお決まりになりましたら、ベルでお呼びください」と告げ、厨房の方へ去っていった。