【ひまりside】


私は桜家長女だった。

物心ついたときから使用人に囲まれ、食事も着替えも一緒、出かける時も一緒。

そんな生活が当たり前だった。


何かを言えば、大抵のことは実現できる。


だからといって無理を言うわけではなかったけれど、お金はもちろん、食べ物や服、本などに困ることは一度たりともなかった。


毎日のお稽古事も勉強も礼儀作法も、何一つ苦ではなくて。


だからこそ、"彼"に出会った時の衝撃はものすごく大きかったのだと思う。