どんなに憂鬱でも、必ず夜は明ける。

いくら拒んでも、朝は来る。


「お嬢様」


トントン、と戸がノックされた。


……九重だ。


布団に潜り込んで身体を縮こまらせる。


「……お嬢様?」


布団の中で目を瞑っていると、戸が開けられる音がした。

それから、わずかな足音が聞こえてくる。


……お願いだから、こっちに来ないで。

どんな顔をして会えばいいのか分からないから……。


そんなわたしの思いもむなしく、近くから九重の声が降ってきた。


「朝ですよ、お嬢様。そろそろ起きてください」


ここは寝たふりだ。

寝たふりでやり過ごそう。


息を潜めてじっとしていると、


「もしや、具合でも悪いのですか」


と焦った声が聞こえてきた。


「お嬢様、失礼しま────」


やばい、布団を剥がされる、と必死に布団を掴んで抵抗する。


「……ん?」


わたしが起きていることを確認した九重は、今どんな顔をしているんだろう。


確かめるのが怖い。