「すず。今回呼んだのは他でもない。パーティーのことなんだが」

「毎年のことだから分かるわよね、すずちゃん」



身を固くするわたしの横で、九重が静かに立って話を聞いている。



やっぱり何度顔を合わせても緊張するよ。


この間ファミレスに行ったこと、バレてないかな。


一度気になりだしてしまうと、なかなか意識から外すことは容易ではなくて。



「……すず?」

「は、はいっ」



無意識のうちに、目がキョロキョロしていたみたい。


具合でも悪いのか、と問われてぶんぶんと首を横に振る。



「ダンスの稽古はどうだったか?」

「あまりうまくできませんでした」



これは謙遜とかじゃなくて、本当のこと。


ピアノのお稽古の後であったダンスのお稽古の有り様と言ったら、それはもう酷いものだった。



「今年からダンスの稽古を入れたのはな、すずに今度のパーティーでダンスをしてもらうためなんだ」



ついに来たか、と姿勢を正す。


ものすごく怖いけど。


でも、気になることは訊いてみないと駄目だ。



「ダンスは、男性の方と2人で踊るのですか?」

「そうだ。毎年すずも見ていたから分かるだろう」



その言葉を聞いた瞬間、さあっと血の気が引いていく。


毎年のパーティーで御令嬢や御子息、芸能人や御曹司の人たちが、ドレスを着て優雅に踊っているのを、わたしは端で見ていた。


それなのに今年からわたしが踊る側になるなんて!