「ラン、ルナ、ご飯だよ」

「にゃー」



ものすごい速さで駆け寄ってきたのは白猫のラン。


一方でルナは物陰からひっそりとこちらを見ている。



「ルナ。食事にしましょう」

「みゃあ」



九重の言葉には素直に返事をするルナ。



「ルナはほんとに九重が好きなんだから。ちょっと妬けちゃうな」

「にゃー」

「ランはわたしのことが大好きだもんね!」



小さな体を抱き上げると、腕の中でランは「にゃあ」と可愛らしく鳴いた。



「ルナ、せっかくお嬢様に愛でてもらうチャンスですのに。勿体ないですね」

「そうだよー?ルナ。わたし、ランのことばっかり可愛がっちゃうよ?」



そう言ってみても、まるで動く気配なし。


九重の足元にピッタリとくっついて、その漆黒の瞳でじっとわたしのことを見つめている。



「もう、しょうがないなあ。九重、ルナにこれあげて」

「承知しました」

「みゃあ」



まったく。


わたしの方が絶対にルナを溺愛できるのに。


……って、思っていたんだけど。



「美味しいか?ルナ」

「みゃう」

「そうか。よかったな」



ルナに話しかけるときだけ敬語がとれる九重に、不覚にもドキッとしてしまう。


この数日で分かったことだけど、九重はどうやら動物と話すとき、敬語がとれるらしい。


ものすごく優しい眼差しでルナを愛でる様子は新鮮で、また九重の新たな一面が見られた気がして、ちょっと嬉しかったりする。


だからしばらくはこのままでもいいかも、なんて。


心の中でこっそり思っていたりするんだ。