この声で「ありがとう」とたくさんの「好き」を

しばらくすると、一時間目の予鈴が聞こえ、5分後には授業開始のチャイムが鳴っていた。
一時間目が体育のクラスだろう。運動場から生徒の慌ただしい声が聞こえてきた。
ベッドに座りカーテンを少しめくって外を眺める。
あれは確かB組かな。
運動場を見渡すと体育の先生とともに一人の男子が小走りでクラスメイトの元へ駆けていくのが見えた。
誰だろう、初めて見る人だ。あっ、よく見るとその男子だけ体操服のラインの色が少し違っていた。
もしかして、あの男子が転校生なのかもしれない。
私はな、ぜかちょっとだけ興味が湧いたから一時間目の間、観察していようと思った。
この時期2年生は男女問わずハードル走やる。
先生の説明らしきものを聞いたあと、倉庫の方にわらわらと駆けていくのが見えた。
その中にさっきの転校生も数人の男子に囲まれながら混ざっていた。
先生が言っていたように本当にはやく馴染めるんだなと、少し感心したが心のそこではよくわからないような渦がぐるぐるとしていた。
私はクラスから外されたのに、なんであの男子は快く受け入れてもらえるの……?
あの頃の記憶が蘇り吐き気がお腹のそこからゆっくりと迫ってくる気がして、気持ち悪かった。
頭からあのことを追い出したくて、カーテンを閉じベッドの上に寝転んで固くまぶたをおろした。