「トキくんに言いにくいなら、私からトキくんに言うけど?

でも、まぁ……トキくんは、砂那のいう事だったら絶対に聞いてくれると思うけどね」

「え、それってどういう……」



ニヤニヤ笑うしずかちゃん。すごく気になる笑い方なんだけど……っ。

だけど教えてくれる気はないのか「とにかく!」と手をパンと叩く。



「ハチマキの件、トキくんに協力してもらわないなら、この話はナシ!

さ、帰ろう。遅くなる前に、久しぶりに何か食べて帰ろうよ。中学の塾帰りの時みたいに」

「た、食べる!わーい、楽しみッ」



ルンルン気分でカバンを持つ。

そして胸に小さな蟠りを残したまま、教室を後にした。



「……」



その時、手を洗い終わったトキくんが、反対のドアにいたことに気づかないまま――

今までの話を、まさか聞かれていたとは思わないまま、私はひっそりと計画を進めよう企んでいたのだった。