寡黙なトキくんの甘い溺愛


大橋を前にして、少しの間、あの受験の日のことを思い出していた。


初めは緊張した様子だったのに、俺と話すうちに氷が溶けるみたいに、二人の空気が浸透していって……。



『なんでだろう……あなたといると落ち着くの』



あの時、倉掛さんは「落ち着く」と言ってくれたけど、それは俺も同じだった。倉掛さんの隣は、ひどく心地が良い。癒される。そして、倉掛さんを放っておけなくなる。

あの現象は、



「(一目惚れ、なのかな……)」

「な、なんだよ。気色悪いな、笑わないでよ」

「……笑ってない」

「自覚ないのかよ……倉掛さんの事でも思い出した?」

「……関係ないだろ」

「(耳まで赤くして、何を今更)」



大橋が愕然としたのを知らない俺は、現実に戻って、最後の忠告を大橋にする。



「とにかく――

俺の好きな人は、俺が守るから」

「!」

「学級委員の事……ちゃんと謝れよ」



それだけ言って、大橋を残して教室に戻った。