「じゃ、俺はこれで……」
「あ、はい。ありがとうございました!」
ペコリとお辞儀をする。するとメガネがズレてしまい、顔を上げた時にピンとが合わずに視界がボヤける。
そんな中で、薄っすら見える、さっきの男の子。
前を歩いていたのに、急に止まったかと思えば私の方を振り返って、またペコリとお辞儀をした。
「(随分、律儀な人だなぁ……)」
私と似て、地味な人。
また、会えるかな――?
「(そんなことより、今は試験試験っ!)」
妙な親近感を覚えて、嬉しくなって……今思えば、浮ついた心で試験に臨んだのかもしれない。
だから、撃沈したんだ。
私の試験への手ごたえは散々で、全教科が終わった後、絶望の淵に立たされた。「絶対に不合格だ」と悲しみに暮れ、帰り道の河原で一人反省会をしたのは、今でも鮮明に覚えている。