「試合ならもう申し込んでるでしょ。でも、今はダメ。ほら、動いた動いた。

じゃあ砂那、私はアオを連れて職員室に行ってくるわ」



フーフーと猫が怒っているようなアオくんをものともせずに、しずかちゃんはアオくんを連れてこの場を去る。「え、しずかちゃん?大橋くんは?」と聞くと、「自分たちの事もついでに噂してくれって、校内中を走り回ってるよ」と、困ったようにしずかちゃんが答えてくれた。

耳をすませると、確かに。

「俺と相条しずかも付き合ってるんだよー!!」という叫び声が、かすかに聞こえる……。しずかちゃん、恥ずかしくないかな?大丈夫かな?

心配でしずかちゃんの後ろ姿を見ていると、他の男子から「本当に付き合ってるの?」と早速聞かれていた。すると、



「……うん、付き合ってる。あのうるさいの、私の彼氏」



そう言って、嬉しそうに笑うしずかちゃんがいた。