倒れる直前で俺が支えて、アオは何とか床にぶつからずに済む。だけど、玄関だ。そこからどうしようかと迷っていると、砂那のお母さんが帰宅した。俺はアオをリビングに運び、そして後は何もしてやれないと悟る。なので挨拶をして、アオを砂那達に任せて玄関を出た。


バタンと玄関のドアを閉めた時に、砂那のお母さんが「砂那が最近お化粧を練習してたのってあのイケメン君のため?」という声がした。しばらくした後に砂那が「うん」と控えめに、小さな声で返事をしたのが聞こえた。



「(照れてる、かわいい……)」



さっきの出来事が夢のようで、でも、夢じゃなくて……。どうしようもない幸福感で満たされる。

砂那と付き合えた喜び。彼氏彼女になった恥ずかしさ――どれもこれも、全てが愛しく思える。



「砂那、ありがとう」



俺のために一歩を踏み出してくれてありがとう。
俺のために頑張ろうと思ってくれてありがとう。

砂那、大好きだよ。


これからも、ずっと。


ずっとずっと、その先まで――俺は砂那を、愛し続ける。




side トキ end