薄赤い唇に、自分の唇をグイッと近づける。直前に砂那の驚いて見開かれた目が視界に入った。けど、もう、俺は俺自身を止められそうになかった。
けど、
ガンッ
「え、トキくん!?」
チリッと、まるで摩擦が起きて火花がはじけたように。少しだけ唇が当たった、その時に――俺は急いで頭を引き、その衝動で玄関の扉で思い切り後頭部を打つ。
砂那は俺の頭を触り、しきりに心配したけど、俺は安堵していた。痛みが加わった事で、俺の理性がだんだんと戻ってきたからだ。熱が引いていく。砂那に、幻滅されないで済んだかな……。
「砂那、痛くないから。頭は大丈夫だから。それより、ごめん、俺……」
顔を赤くして、砂那を見ないように、わざとらしいくらい顔をそむける。申し訳なさと、自分の体たらくを見られてしまった恥ずかしさから……砂那を見ることが出来ない。
だけど、砂那は「よかった」と、そう言って俺の頬を撫でた。



