砂那が駆け足で中庭を後にした、今、この時。

俺は、静かに中庭に佇んでいた。

きっと今頃、砂那は屋上で二人を見つけて、和解をして、そして――報告する。



「トキくんと付き合うことになったの」



その時の、顔を真っ赤にして話すだろう砂那を想像して、心臓がキュッと音を立てて収縮する。かわいい。砂那の照れながら、戸惑いながら話すその瞬間を、俺もみたかったな――なんて、そんな事を思いながら。



「でも、そっか……」



砂那も俺のことを好きでいてくれた。それだけで、こんなにも満たされた気持ちになる。

俺、やっと……砂那と思いを通じ合う事が出来たんだな。



受験の日から今まで、自分の頑張りは無駄だったんだろうかと、何度も自問自答してきた。入学式の日なんて、砂那に知らない人って思われてたし、「トキくんは私の事を気にせず好きな人作ってね」なんて頭に隕石が落ちたくらいの衝撃的な事も言われた。


だけど――