「お守り……ってわけじゃないけど、砂那なら大丈夫。これを二人に渡すころには、きっと皆いつもの友達に戻ってるよ」

「で、でも、これはトキくんが買ってくれたジュース……」



「いいんだ」トキくんは笑う。そして「大橋には本当に悪い事をしたから。そのお詫び」と言って、曇りない笑みで笑った。



「……ありがとう、行ってくるね」



お言葉に甘えて、私は中庭を後にする。校舎の中に入る時、トキくんを見るために振り返ると、トキくんは尚も私に手を振ってくれていた。そして口パクで「がんばれ」と応援してくれる。



「トキくん、ありがとう……大好き」



授業中だから大きな声で言えない。だから、自分だけに聞こえる小さな声で返事をした――つもりだった。決して聞こえないと思っていたのに、読唇術でも使ったのか、トキくんは顔を赤くして照れたように笑った。

まさかの以心伝心に、私もまた少しだけ照れてしまう。だけど、同時に嬉しくなって――二人の元へ向かう足取りは、すごく軽やかになったのだった。