そんな私を見逃さなかったトキくん。私の頬に手を当てて「砂那」と、優しく笑う。
「もう気づいてると思うけど、言わせて。俺は……
砂那の事が好き。俺が強がりを見せたいのは、完璧な人間だって思ってもらいたいのは、砂那だけ」
「!」
心臓が、止まった。ヒュッと音を立てた息は――この静寂の中に、静かに消えていく。
「砂那に振り向いてほしくて、自分を見てもらいたくて……カッコ悪いほど自分を取り繕っている。変わったのは見た目だけ。見た目さえ変われば、それでいいと思ってた。
だけど、違うんだね。砂那に会って、初めて気づいた。中身から変わらないといけないんだって。俺と言う人間の中も外も好きになってくれないと、意味がないんだって……今、初めて気づいた。
砂那、ありがとう。気づかせてくれて――大好きだよ」
「トキくん……っ」
好きな人から、感謝される。自分を認められる。そして、好きと言われる。
この瞬間、私の頭の中に扉が出て来たような気がした。小さな扉。指一本ほどの大きさのドアノブを回せば、いとも簡単に扉は開く。



