「ねえトキくん」
「どうしたの」
「私、トキくんに話したいことがあるの。長くなるんだけど、聞いてほしい……」
「うん、もちろん」
優しく微笑んでくれるトキくん。彼の手にはオレンジジュース。私の手にはリンゴジュース。
お互いに、まだ開けていない。口をつけない。全ては、話し終わってから――言わないけれど、以心伝心で伝わっているような気がした。
トキくんの、こういう波長が私と似ている気がして……思わず、あの日の事を思い出す。
初めてトキくんに会った日のこと。
私と同じ、地味で目立たないトキくんに勝手に仲間意識を芽生えた、あの日の恥ずかしい自分のことを――
「これから話すことって、本当の私のことで……きっとトキくんガッカリすると思う。だけど、聞いてほしい。私がいま初めて私と向き合うから、トキくんには見届けてほしい。私が逃げないように、そこで見張っていてほしい」
「うん」
自分でわけのわからないことを言っていると思った。トキくんだって、内心はきっと訳の分からないはず。
だけど、何も聞き返さずに頷いてくれるトキくんが、今はすごく有難くて……ウソをつかず全てを話そうと改めて思える。
私という人間を、私という弱い人間の事を――トキくんには、知っていてほしい。



