――「トキくんが、そんなこと、言わないで……っ」




そう言った砂那は、泣いていた。きっと、俺が泣かせた。



キーンコーンカーンコーン



午後の始業のチャイムが鳴って、先生と同時に教室に入ったけど、砂那は教室に戻ってなかった。てっきり、先に戻ってると思ったのに……どこ行ったんだ、砂那……。



だけど、教室に入ってしまったからには、先生の目に留まってしまう。「吾妻、小テストするぞ。早く席に着け」そうだ。数学の授業だった。

大橋を見ると、熱心に教科書を見ている。その横の席が一つ空き、相条さんが心配そうに俺を見ていた。



「(相条さん……?)」



いつも自信満々な顔の彼女が、弱々しそうにしているのが引っかかる。それに、砂那の席をチラチラと見ているのも……。俺は話を聞くべく、席に着く。