「(好きだよって言われてないから、なんか、どんどん不安になってきちゃった……!)」



そんな私が隣にいるとは露知らず……トキくんは「じゃあこれから柔道部に入部してくるから、またね!」と笑み全開で教室を後にする。一筋の風が吹き終えた頃には、私の顔からは完璧に笑顔が消えていた。



「トキくん……肝心な事を、言い忘れてるよ……っ」



弱々しい声は、また蹴られたサッカーボールの音にかき消される。

一日に「幸せ」と「不安」が押し寄せてきて、私の心はボールのようにあっちへコロコロ、こっちへコロコロ……。そして部活終わりのしずかちゃんに話を聞いてもらうまで、忙しく駆け回っていたのだった。