「……砂那、さっきから視線が痛い」

「あ、ごめん……」

「ううん。やっと放課後だね。今日は一日が長く感じた。プール掃除の疲れかな?」

「ふふ。そうかもね。頑張ったもんね、私たち……じゃなくて。

分かってて話を逸らさないで!トキくん」

「……話?」

「アオくんとの試合のこと、だよ」



プール掃除が終わってから暫くした日。

私は自分の席を立ち、後ろを向いて抗議をしていた。その相手はもちろん、トキくん。



「アオくんに、試合を撤回してよ。お願い」

「……嫌だ」



立ち上がる私を、座ったままの姿勢で見つめてくるトキくん。その目からは強い意志を感じ、どうにも私が「お願い」している事を拒否する気満々。

私は行き場のない感情を抑えるかのように、ストンと席に腰をおろした。


「トキくんに……何かあったら嫌なの……」

「砂那……?」

「だって私、トキくんが大事だもん」



はぁ、とため息混じりに言うと、どこかソワソワし始めたトキくん。その真意を分かりかねていると、横から大橋くんがニュッと、私とトキくんの間に顔を出してきた。