倉掛さん――


その名前が聞こえた途端、俺の足は動いていた。

見ると確かに、倉掛さんがいる。

しかも、誰だか分からない奴に腕を掴まれて、ひどく怯えている様子だった。

俺は走って二人の間に行き、そして――



ガッ



「ごめんけど、離してやって」



男の手を掴んで、強引に倉掛さんから手を離させる。

男は俺を見て「あ、吾妻!」と驚いて、罰の悪そうな顔をした。



「ちゃんと見て、倉掛さん嫌がってるから」

「お、俺はただ、倉掛さんを誘ってるだけだ!」

「……こんなに怯えてるのに?」

「え……?」



その時に、男はやっと冷静に倉掛さんを見たらしい。

男を避けるように俺の後ろ隠れる倉掛さんを見て男は「あ……」と眉を下げた。少しは懲りたか?



「倉掛さん、ごめん……その、熱くなり過ぎた」

「え……あ、あの……」

「でも、さっきの話は考えといて。また、答えを聞きに、」



すると、俺の後ろにいた倉掛さんが、隣に来る。俺の背中に手を回し、服をギュッと握っている。