「だから、どう?倉掛さんっ」
「あ、の……」
男の子って、こんなに力が強いんだ。
男の子って、腕一本で女の子を動けなく出来るんだ。
私、男の子を知らなかった。
だって、今まで知ってるのは……
『頑張ったね、倉掛さん』
『いいから。黙って俺に守られてて』
トキくんの、優しい手の温もりばかり。
私が知ってる男の子は、トキくん、ただ一人――
「(トキくん……っ!)」
咄嗟に心で叫んだ、その時だった。
「ごめんけど、離してやって」
私の前に、突如として姿を現した。
その人は――
「と、トキ、くん……?」
「……うん」
買い物の時も、ドッチの時も、ずっと見ていたトキくんの後ろ姿。
その後ろ姿は、カッコよくて、まるで王子様で……
「(あぁ、もう……限界だ)」
私の心が、いとも簡単に溢れてしまった。