去りながら手を振る相条さん。俺の方は向かずに、こんな忠告をしてくれた。



「トキくんはそうでも、他の男子は違うからね?砂那の可愛さに気づいた男子が、この二日、砂那に押し寄せるかもよ?」

「!?」

「ほら、既に大橋がロックオンしてる」



見ると確かに、倉掛さんに話しかけている大橋がいる。

俺も――と近づこうとした瞬間「ピー」とうみ先生がホイッスルを吹いた。



「はーい、バス来たわよー。皆、決められた順番に決められた席に座ってねー」



足止め。

俺は仕方なく、列に並ぶ。大橋と倉掛さんも、話すのをやめて列に入ったらしかった。



「(そう言えば、俺の隣は大橋か……)」



バスで一時間と言っていたけど……一時間、大橋のあの煩いのに耐えないといけないのか。



「(ずっと寝たふりしよう)」



そう心に決めて、バスに乗り込んだ。