(やっぱり、これが普通の反応よね)


 頬を真っ赤に染めながら、クララは苦笑を浮かべる。恥ずかしい。けれどこれが自分の願望だ。
 それに、正直に打ち明けることで、『こんな夢見がちな女には付き合いきれない』と王子が婚約を見直してくれるならば良いではないか。そう思い直すことにする。


「うちの父と母、恋愛結婚なんです。今でもすごく仲が良くて。わたし、そんな二人にすごく憧れていて」


 ポツリ、ポツリと想いを語りながら、クララは目を細めた。


「わたしには兄が二人おりますし、家督のことは気にする必要がありません。父も出世やお金にはあまり興味がない。だから、結婚のことはある程度わたしの好きにして良いと両親も許してくれていた――――――そのはずだったんですけどね」


 クララはバツの悪そうな父の顔を思い浮かべながら顔を顰めた。

 大切で、とても尊敬している、大好きな父親。けれど、こんな大事なことを何も話さぬまま、娘を城に送り込むなんてあんまりだ。

 とはいえ、内侍の打診を受けるまでの1か月ほど、父の口からは毎日『婚約』の2文字が発せられていた。話を聴いて欲しいと訴えかけてきた。けれど、それ以上耳を傾けなかったのは他でもない。クララ自身なのだが。


「ふぅん。城には良縁しか転がってないうえ、運命の出会いが望める。内侍の話なら受けようと思ったのって、そういう魂胆?」


 コーエンがそう言ってニヤリと目を細める。とてつもなく嫌な男だが、頭の回転は悪くないらしい。クララはコクリと頷いた。


「だったらおまえは、おまえの目的のためにここで働けばいい」