【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~

 あの夜以来コーエンの前で『ヨハネス』は禁句だ。言えばクララを抱きすくめ、警戒を露に周囲を見回す。


「ねえ、コーエン。どうしてあの夜『わたしが婚約を破棄する』って勘違いしたの? そう言えばあの時、ヨハネス殿下の名前を口にしていたけど……」

「…………」


 事情を話したくないのだろう。コーエンは口を噤んだまま、そっぽを向いている。


「コーエン?」

「実はね、あの夜ヨハネスから手紙が届いたんだ」

「ジェシカ! 勝手にバラすなって!」


 コーエンは真っ赤に顔を染め、バツが悪そうに頭を掻く。


「【クララは僕が貰う。君とは結婚させない。既にクララの承諾は得た】なんて書かれてあってさ。いやぁ、中々に情熱的な手紙だったなぁ。どっかの誰かとは大違いだ」

(そっか。そんなことが……)


 コーエンをけし掛けるため、前回同様ヨハネスは策を弄したらしい。
 もしも彼が『アリスがコーエンとの結婚を望んでいるわけではない』と知っていたのなら、本気ではなかったのだろうが。