コーエンは呆然としていた。きっと、断られるなんて想像していなかったのだろう。目を見開き、苦し気に眉間に皺を寄せている。


(わたしは、コーエンを傷つけたい訳じゃない)


 そっと頬に手を伸ばすと、コーエンの頬は血が通っていないみたいに冷たくなっていた。


「コーエン、わたしね――――何よりも大切な願いがあるの」


 目頭が熱い。ジュクジュクと疼いて、今にも崩壊しそうだった。

 コーエンは色を失った瞳のままクララを見下ろし、押し黙っている。


「他の誰でもない。コーエンに王様になってほしい」


 ハッキリとした声音でクララがそう言う。

 この数日間、ひとりで温め続けた願い。言葉にするだけで、涙がポロポロと溢れてきた。

 コーエンは驚いたような、どこか希望を見出したような、そんな複雑な表情を浮かべていた。クララの涙を拭いながら、彼自身、今にも泣き出しそうに見える。