(――――そんなの、元々覚悟していたことだわ)


 王妃に話を聞いたその時から、フリードが王太子になれなかった場合に待ち受ける未来を、クララは覚悟しているつもりだった。けれど、いざ『約束』という言葉を用いられると、途端に足がすくんでしまう。


(この取引でシリウス様が救われたとして――――それで王位継承戦が優位に進むわけではない。きっと、そうだ)


 シリウスが助かる保障もなければ、寧ろ窮地に陥れてしまう可能性だってある。
 それでも。


(コーエン――――――)


 クララのすることが、少しでもコーエンの助けになればそれで良い。それだけでクララは本望だ。


(それに)


 クララの願いは、コーエンが王位継承権を手にすること。
 カールでもヨハネスでも、フリードでもない。コーエンに未来の王となってほしい。

 けれど、現王兄の子であるコーエンには本来王位継承権がない。それでも、彼が王としての権利を手にする方法はある。