それは、休暇から帰って1ヶ月ほど経過した、ある日のことだった。


「どういうことだ、カール!」

「…………なんだ、もう来たのか」


 コーエンを先頭に、フリードとクララはカールの執務室に乗り込んでいた。

 カールはふぅ、とため息を吐きながら、徐に立ち上がる。
 彼の隣にはイゾーレが一人。この時間帯は大抵側にいるはずのシリウスが今はいない。


(やっぱり……)


 クララは小さく息を呑みながら、コーエンを覗き見た。


「シリウスを謹慎処分にしたって本当か?」


 普段、フリード以外の王子に対して丁寧な口調で話をするコーエンが、今日は思い切り声を荒げている。そのあまりの剣幕に、フリードとクララは顔を見合わせながら、ゴクリと唾を呑んだ。

 イゾーレは一見、いつも通りのポーカーフェイスに見えるが、実際は違う。時折不安定に瞳が揺れているし、何かを耐えるように、手を開いたり握っている様子が見られた。