【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~

 イゾーレは騎士たちが張ったテントの中で眠っていた。


(遠目からじゃよく分からなかったけれど)


 クララ達を逃がすその間に、イゾーレは怪我を負ってしまっていた。
 頭から左目を覆うようにして巻かれた包帯がとても痛々しい。クララは思わず顔を顰めた。


「イゾーレ」


 カールがそう呼びかける。思いのほか優しい声音だ。
 イゾーレの瞼がピクリと動き、やがてゆっくりと開いた。


「殿下……クララ様も」

「良かった!イゾーレ………本当に良かった」


 淡々と響く弱々しい声。それでも、イゾーレが生きていることを実感するには十分で。クララの瞳から涙が零れた。


「殿下、私は……殿下のお役に立てましたか?皆さまにご迷惑をお掛けしたのでは……」

「なにを言う!おまえは立派だった!男でも身が竦むほどの相手に、逃げることなく対峙し、俺の命令以上の働きをした!迷惑などと思うものがいれば、俺が切り捨てる」


 カールはそう言って、イゾーレの手を握った。所々擦り傷を負った手のひらに、まるで吸い寄せられるかのように、カールが唇を寄せる。


(えぇっ!えぇぇええぇ!?)


 何とも良いムードを邪魔するわけにはいかないので、クララは必死に己の口を抑える。けれど内心は驚きと興奮で溢れかえり、今にも叫びだしそうだった。


(あの堅物カール殿下が!まさか!信じられない!)


 彼の仔猫に対する反応を見た時だって驚いたが、クララが今受けている衝撃とは比べ物にならない。

 イゾーレ自身も、まるでこの世に存在しない珍獣でも見たかの如く、目を見開いて驚いている。