【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~

「だけど」

「正直、上手くいく保障はありません。クララ様を逃がす間すらないかもしれない。でも、カール様が私にあなたを守るよう言いつけたのはきっと――――クララ様さえ生きていれば、他の皆も守ることができると思ったから。今、そう気づきました」


 その瞬間、熊が物凄い勢いでこちらに向かって駆けてくる。イゾーレは身を低くし、熊目掛けて身体を滑り込ませた。


(無茶よ)


 細身の女性が、一人で熊を相手に勝てるはずがない。けれど、クララがイゾーレの元へ行けば、足手まといになるどころでは済まない。二人に待ち受けるのは死のみ。そして、事態に気づかなかった他の人間にも被害が及ぶ。


「逃げて」


 蚊の鳴くような声で叫びながら、クララはふらふらと立ち上がる。


「お願い、逃げて!熊よ!」


 足がもつれる。ドレスの裾が邪魔をする。けれどクララは走った。


「熊が来たわ!お願い、逃げて!」


 やっとのことで人のいる場所に声が届く。クララの必死の訴えに、侍女たちが数人、クララの元へ駆けつける。


「お願い、皆に伝えて。皆を逃がして」

「クララ様は如何なさるのです?」

「イゾーレが熊の側にいるの。彼女の所に戻るわ」