仕事上の事故とは言え、自分の婚約者を庇ったために起こったランスロットの異変を重く見たコンスタンス様は、すぐに城から筆頭魔術師リーズを呼び寄せた。

 関係者なんだから自分も一緒に聞くと私は言い張り、リーズの詳しい説明時にも彼らの傍に居た。私とランスロットの二人の関係を知ってか知らずか、言いづらそうにしている彼の口からこの事態が明らかにされた。

 あの黒いもやもや……ランスロットが受けた呪術の正体は彼の持っている恋愛感情を消して、それに纏わる記憶もすべて消してしまうというものであった。

 自分の事だからこそというか、逆に冷静になって考えられた。

 王太子コンスタンス様に対して効果的な大ダメージを与えたいなら、それは物凄く良い方法なのかもしれない。愛しのラウィーニアをようやく名実共に手に入れたと思っていた彼が、この先長期間大事な政務に手がつかなくなる恐れもあった。

 この方法を思いついた人は、きっととっても頭が良い。そして、とっても性格も悪いんだろうけど。

 そして、結果的に私に対してその効果的な大ダメージが回ってしまった訳だけど。

 立ったままでその事実を聞き、何の言葉も出せずにふらついてしまった私を素早く支えてくれたのは、他でもない隣に居たランスロットだった。

「ありがとう」

 体を支えて手を取ってくれたランスロットの手は当たり前だけど、少しも震えてない。だって、彼は今は私の事を好きではないから。

 思わぬ事でその事実を思い知ることになり目を見開いた私にも、彼は騎士らしく丁寧に紳士的に接しただけだ。

「……いいえ。お気になさらず」