王城にある大広間の中は天井に吊されているきらびやかなシャンデリアの光も眩しく、なんだか不思議なものだけれどキラキラとして輝いて見えるような華やかな空気で満たされていた。

 王太子殿下主催の夜会という事は、彼の直属の部下たちは出席確実だろう。

 彼の護衛のための数人の近衛騎士は除き、この国の主力である王宮騎士団で要職に就く面々も、やがて姿を現すはず。特に人気のある騎士達は、出席を厳命されているだろう。きっと、筆頭騎士五人の一人ランスロット・グラディスや……クレメント・ボールドウィンも。

 一人佇む私の周囲には、そんな彼らに会えるのならと、とても気合いを入れてきた様子の美しい貴族令嬢たち。こういった出会いの場でもある夜会に出席し誰に言い寄られ恋仲になるかで、この先の人生が決まると言っても過言ではない。

 良い縁談のためにと親から潤沢に与えられる着飾るためのお金に困らない彼女たちは、それぞれ自分の個性に一番良く合うドレスをお抱えのメゾンで仕立てる。そんな中にも、やはりその時々の流行りは必ずあって、今は青系のドレスが多い。

 青の濃淡に同系の薄紫色の私は溶け込みつつも、やはり未だ片付いていない心中は複雑だった。

 顔見知りなどで寄り集まり笑いさざめく、ざわざわとした大広間には、今夜の開会の時間がそろそろ近付いていた。もうそろそろ主催者である王太子コンスタンス様が現れて、口上があるはず。

 それからコンスタンス様は王太子妃候補の一人と、決められた順番通りに踊るはずだ。けれど、少数しか知らない事だけれど、もう彼はラウィーニア一人に心を決めている。きっと今夜は、彼女と踊るだろう。

 やがて時は来て王太子の登場を告げる声が、大広間に高らかに響いた。