取り急ぎ、必要な下準備を整えた私は親族特権でラウィーニアにお願いして取り次いで貰い、コンスタンス様からグウィネスとの対面の場を用意して貰うことになった。

 一応名目上としては、ラウィーニアと私を救ってくれた恩人を歓迎するための少人数での晩餐会だ。もちろん、氷の騎士ランスロットも出席する。というか、あの時に来てくれた筆頭騎士の何人かも全員来るようだけど、今回ばかりはラウィーニアはクレメントの名前は出さなかった。

 そして当日の晩餐室は、良くわからない緊張感が漂っていた。何とも言えない表情のコンスタンス様も、立場上私に対して何かを言う訳にもいかない。他でもない彼だって、部下に対してある女性との結婚を強いるなどという事は避けたかったはずだ。

「……良く来てくれた」

 王太子コンスタンス様は、この前の凶事の恩人である魔女グウィネスが侍従に案内されて部屋に入って来たのを見てゆっくりと立ち上がった。もちろん、身分的に下に当たる私たちも彼を立たせて自分が座っている訳にはいかないので、揃って立ち上がる。

 晩餐室に揃って居た彼女以外の全員が自分に対して一斉に礼を取ったものだから、グウィネスは驚いて固まっている様子だった。彼女の出身地である東の地ソゼクはこういった堅苦しい礼儀作法はないようだし、正装した王族や貴族が何人も自分に向かって礼をすれば驚き戦いても仕方がない。

 こうした場に出席するために、招いた本人となるコンスタンス様が用意するように命じたというベージュのドレスを身に纏っているグウィネスは、本当に美しくて等身大の人形のようだった。