私たち二人は迫り来る黒い不安を、少しでも払拭したい思いで取り留めもないことを長い時間話し続けた。ついには話し疲れて、二人寄り添ったあのままで眠ってしまったようだ。

 目覚めて、薄く目を開けると……また闇。

 けれど、今居る場所は堅い鎧戸が完全に閉まっていた真っ黒な箱のような馬車の中ではなかった。薄闇の視界の中で、ぼんやりとだけど部屋の様子が見えている。

 あれから、どのくらい経っているのか。私にはもう時間の感覚が、全くわからなくなってしまっていた。

「ディアーヌ。起きたのね」

 疲れた笑顔を見せて、眠ってしまった時と同じように私の隣に居たラウィーニアは言った。

 もしかしたら、彼女はほとんど眠れていないのかもしれない。深く眠っていたとはいえ、この状況下で誰かに運ばれた様子だというのに全く気が起きなかった自分が信じられない思い。

「ここは……?」

 手のひらに感じるのはざらっとした質感の、磨かれてもいない素朴な木の床。どこか倉庫のような部屋で、多くの棚に沢山の物が置かれてなんなら溢れている。

 そして、何故か私は今こうしてしっかりと床の上に座って居るというのに、宙に浮いているような不思議な浮遊感があった。