クレメントと二人で険しい山道を歩きつつ、互いしかいないのに黙っているのも不自然で、逆に彼を意識しているように思えて来た。そして、一度でも話してしまえば、川の堰を切ったように思いつけば話すことがいくらでもあった。

 確かにあまり口外しづらい始まりからだとは言え、私たちは一年ほどの間誰よりも近い距離に居たのだ。共通の話題は、見つけようと思えばいくらでもあった。

 もし、まだ彼を好きなままなら。こうして、一緒に居るのは辛かったかもしれない。けれど、もう私にとっては元彼であるクレメントとの事はすっかりと過去へとなってしまっていた。